全国ホームヘルパー・ガイドヘルパー協議会で4月より精力的に取り組んできた介護福祉士・介護支援専門員の廃業事業所に勤務していたために正当なキャリアが消滅してしまう問題について朝日新聞が全国版で報道しました。協議会として資料・データの提供をはじめ、取材対象の方の紹介を行いました。



20071020日 朝日新聞記事より

介護福祉士や介護支援専門員(ケアマネージャー)の資格試験を受けたいのに、勤め先の事業者が廃業し、受験に必要な実務経験の証明書を入手できないトラブルが増えている。介護保険のスタートから7年たち、廃業が急増しているためだが、なかには嫌がらせで書かないケースも。介護の担い手不足が問題となるなか、人材育成への悪影響を心配する声も出始めた。
介護職歴証明できない
「資格受験に必要・・・」トラブル相次ぐ

ヘルパー経験10年「幻」

「介護保険が始まる前から仕事をしてきたのに、こんなバカな話はないです」
 東京都内で登録ヘルパーとして働く女性(60)は肩を落とす。ホームヘルパーの職歴は10年を超える。
 昨年1月、勤務先の訪問介護サービス会社が突然廃業した。受験を希望していた介護福祉士試験が気になり、試験を扱う社会福祉振興・試験センター(東京)に問い合わせた。受験には介護などの業務への従業期間が3年(1095日)以上、従業日数が540日以上必要で、勤務先の代表者に実務経験証明書を発行してもらう必要があった。
 すでに会社の電話は通じず、所長も行方不明。何か公的な証拠書類がないか尋ねられたが、給与明細は廃棄していて、雇用契約書もなかった。センターに「残念だが、あきらめてください」と言われた。
 まもなく別会社で仕事を再開した。だが幻となった実務経験を取り戻したい思いが消えず、廃業した会社の法人登記簿謄本を入手、記載された役員(所長)の住所を訪ねた。インターホンに反応はなく、近所の人に「そういう名前の人は住んでいない」と言われた。
 「もうあきらめました」と女性。今の会社での実務経験は、まだ1年半だ。

事業所増え廃業も急増
 介護保険の拡大で事業所が増えるなか、廃業も急増している。東京都と大阪府の06年度の事業者の廃止・取り消し件数は、02年度に比べそれぞれ5.6倍、3.4倍になった。
 全国ホームヘルパー・ガイドヘルパー協議会(大阪市)は今年、介護福祉士やケアマネの資格試験について、事業所の廃業をめぐる相談を30件以上受けた。野村俊一事務局長は「全国では相当数が受験を断念していると思われ、人材確保の観点からも見過ごせない」。社会福祉振興・試験センターにも今夏の受験申込期間の前には、1日数件の問い合わせがあったという。

 実務経験証明書がない場合、介護福祉士では、働いた期間や日数、職種などを確認できる公的書類(給与明細や雇用保険の離職証明など)があれば実務経験を証明できる。万一に備え、あらかじめ証明書を書いてもらうことも可能だ。
 ケアマネの場合、受験資格は従業期間5年、従事日数900日以上(一定条件ではその倍)。試験は都道府県ごとに行う。東京都や大阪府の場合、公的書類のみでは受理せず、旧経営者らによる証明が必要。受験年度の書式のみ受理する自治体が多いと見られ、前もって証明書を入手しても自衛策になるとは限らない。

 独自の試みもある。神奈川県のケアマネの指定試験期間、県社会福祉協議会は、今年、閉鎖が決まった事業所から「閉鎖したら社員の証明ができなくなる」と相談され、証明書を前倒しで出してもらい、保存している。県は「個別の対応が今後どこまで可能か、課題は多い」という。
 一方で、本当は従事日数などが足りないのに、虚偽の実務経験で受験する不正が問題になっている。厚生労働省福祉基盤課は「介護福祉士は国家資格。あやふやな根拠で受験資格を与えられない」としつつも「廃業は増えており、実態を聞きながら(対応を)検討しないといけない」と話す。
「見せしめ」故意に拒否
 経営者が故意に証明を出さないケースもある。
 神奈川県の介護福祉士の女性(56)は、ある事業所に01年から勤め、仲間と04年に独立。ケアマネ試験を受けようと昨年、前に事業所に証明を求めたら「結託して辞めたくせに。今いる従業員への見せしめのためにも、絶対に出さない」。今年も答えは同じ。県に相談したが「証明書を強制的に出させる権限はない」と言われた。
 女性は「頑張った3年間がなかったことにされるなんて。介護の世界から去る人が多いのは、低賃金のほかに、こうした立場の不安定さも一因では」
 労働基準法22条では「労働者が退職時に使用期間や業務の種類などの証明を請求した場合、使用者は交付しなければならない」。ケアマネの証明書には、介護の従事日数も記載が必要だ。厚労省監督課は「介護の従事日数まで、使用者に交付の義務が課せられているわけではない」という。

(介護福祉士とケアマネージャー)
介護福祉士は国家資格で、高齢者・障がい者の入浴、食事などの介護や、家族への指導をする。登録者は今年2月で約54万9千人。ケアマネージャーは介護が必要な高齢者の介護サービス計画(ケアプラン)を作り、暮らしを援助する。合格者累計は06年度で約40万1千人。





2006
年(平成18年)729日土曜日の新聞記事より

知的障がい者ガイドヘルパー県の研修体制未整備

全国協議会指摘 実施要綱作成せず

知的障がい者を外出時に移動介助するガイドヘルパー養成研修の体制が徳島と沖縄の二県で整備されていないことが、介護福祉士らでつくる「全国ホームヘルパー・ガイドヘルパー協議会」(大阪市)の調査で分かった。知的障がい者のガイドヘルパーはホームへルパー二級以上の資格があれば兼務できるが、協議会は「専門的な技能習得の機会を提供していないのは問題」と指摘している。ガイドヘルパーの養成研修は、視覚、全身性、知的の三障がいに分けて全国で行われている。このうち視覚、全身性の障がい者へのサービス提供者は、厚生労働省の規定で養成研修を修了している必要がある。徳島県も一九九八年から毎年一回、養成研修を実施。民間業者にも講座を委託し、二〇〇五年末までに県内で視覚障がい千二百二人、全身性障がい千六十五人のガイドヘルパーを養成してきた。一方、知的障がい者については養成研修の必修規定がないため、徳島県は実施要綱を作っておらず、民間業者にも講座の委託はしていない。協議会の調べでは、青森、三重、大分などの九県でも養成実績はゼロだが、いずれも実施要綱を設けていて、鹿児島県では現在、ヘルパーを養成している。徳島県障がい福祉課は「要望があれば本県も実施要綱を作成したが、これまでになかった。研修がないことによる弊害はないと判断している」と説明する。これに対し、協議会事務局の野村俊一さん(43)=小松島立江町江ノ上=は「県内では研修によって認知度が高まっていないため、ガイドヘルパーを利用できることを知らない知的障がい者も多い。他県ではボランティア活動普及のため、中学生らに研修を勧めているところもあり、徳島の体制は遅れている」と話している。





2006815日沖縄県琉球新報より

知的障がい者の外出ヘルパー養成 研修要綱 県は未整備

知的障がい者の外出時の移動を介助するガイドヘルパー養成研修の実施要綱が、全国の中で沖縄と徳島の二県だけが整備されていないことが福祉関係者で構成する「全国ホームヘルパー・ガイドヘルパー協議会」(本部・大阪市)の調べで十四日までに分かった。 ホームヘルパー二級以上の資格取得者は研修を受けなくても介助できるが、同協議会は「研修を修了すれば誰でも外出を支援でき、ボランティアや就労支援にもつながる」と研修制度の必要性を指摘している。 外出支援の養成研修は「視覚」「全身性」「知的」の三障がいに分かれる。県は、厚生労働省が外出支援を行うサービス提供者に研修を義務づける視覚、全身性については要綱を定め、専門学校や福祉団体などで研修を実施している。 「知的」の要綱を整備していないことについて県障がい保健福祉課は、厚労省が必修としていないことに触れ「ホームヘルパー二級以上があれば介助でき、現在もサービス提供者で対応している」と説明しながらも、「外出支援を促進するため、自立支援法などに伴う研修制度の再編の中で充実を図りたい」と述べた。 同協議会によると、五月の調査時点で要綱が整備されていなかったのは沖縄、徳島、鹿児島、新潟の四県だったが、新潟と鹿児島は七月に整備しているという。



2007年(平成19年)511日(金)シルバー新報より

介護福祉士、廃止事業所の経験
証明取れず受験不可も早め取得が唯一の予防

「一〇年間同じヘルパー事業所に勤めていたのに証明書がもらえないという人もいたんです」 高齢・障がい者ヘルパーの養成研修や相談活動などを行っている全国ホームヘルパー・ガイドヘルパー協議会(大阪市)の事務局長・野村俊一さんのもとにはこの一ヶ月間だけでも二〇件くらいの相談が寄せられたという。いずれも介護福祉士の受験申請の際、以前の勤務先が廃業していて実務経験証明書がもらえなかったケースだ。 介護福祉士の受験資格は、三年以上の在職期間と実際に介護業務に従事した日が五四〇日以上あることが要件だ。期間と日数は「実務経験(見込)証明書」で勤務先の事業者に証明してもらわなければならないが、転職などで勤め先が変わった場合、以前の事業所からも証明してもらうことになる。だが、廃業していた場合はこれが困難だ。 社会福祉振興・試験センターでは、代替策として@雇用保険の離職票、A退職共済の加入証明、B給与明細書、C訪問介護の記録書類、D年金加入期間証明書、のいずれかでも確認できるとしているが、登録ヘルパーでは保険に加入している人も多くなく、給与明細を三年分保管しておく人はあまりいない。野村さんが相談を受けた人の中でも「日数」を示せるものを持っている人はいなかったという。 「事業所の廃止は、経営の行き詰まりや代表者の急死、指定取り消しなどさまざまですが、いずれにしても本人の自己責任ではないこと。現実に見合った運用に緩和すべきではないでしょうか」 試験センターでも、「受験資格の問い合わせはここ一年ほどで確実に増えている」(試験室業務第一部)という。現時点では、既に廃業してしまった事業所の勤務証明は、前記の代替策しかなく根本的な救済策はない。将来の受験を考えている場合、退職の際にあらかじめ実務経験証明書をもらっておくことで予防できるという。実務経験の要件を満たすようになったときその事業所が廃業していたとしても証明書は有効になる。 「受験するかどうかわからなくても、辞める時には働いていた証明として用意しておくことがベター。今はこれしか予防策はありません。」再受験の場合もあるため、以前の証明書を捨てずにとっておくことも有効だ。センターでは、受験者に対して証明書の事前準備などを早めに行っておくよう周知していく必要があるとしている。




2006年(平成18年)512日金曜日徳島新聞記事より

精神障がい者のホームヘルパー養成「特別研修」
県が
3月末で取りやめ
関係者が存続訴え
症状把握困難に  サービス低下指摘も

41日の障がい者自立支援法の施行に伴い、症状把握などの特別研修が不要になった精神障がい者のホームヘルパー養成制度。徳島県は3月末に「ヘルパー養成特別研修事業」を取りやめたが、大半の都道府県では引き続き特別研修を実施しており、県内の関係者からは研修の必要性と継続を訴える声が上がっている。精神保健福祉法に基づき、県は二〇〇三年度から養成講座の修了要件として、受講生に県指定の事業所での講義六時間、実習三時間の講習を課していた。県は自立支援法で不要になったため特別講習をやめたが、精神障がい者の中には、突然大きな声を上げる人や自殺願望のある人などさまざまなケースがあることから、研修を続行している自治体は多い。特別研修の修了者などで作る「全国ホームヘルパー・ガイドヘルパー協議会」(大阪市)によると、自立支援法施行後も四十一都道府県が研修を継続している。続行理由について、香川県の担当者は「実情を知らないと、ホームヘルパー自身が対応に苦慮する」と話す。こうした現状から、県内の福祉関係者は、特別講習の必要性を訴える。同協議会の野村俊一事務局長(四十三)=小松島立江町江ノ上=は「県は障がい者が良質なサービスを受ける権利を侵害し、ホームヘルパーにも混乱が生じている」と指摘する。県健康増進課によると、今年三月末までに特別研修を修了した精神障がい者のホームヘルパー数は六百九十七人で、県障がい者施策新長期計画で定めた〇七年度までに必要とする人数を満たしている。同課は「今後新たにホームヘルパーを目指す人に対しては、特別研修は行わないが、問題が生じたら対応していきたい」と話している。